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開催報告:食農連携のための現地コーディネーター研修【石川】

食農連携を活性化させるユニークなコーディネート戦略!

 2010年3月11日(木)石川県地場産業振興センターで「食農連携のための現地コーディネーター研修(石川)」を開催しました。研修には、講師の先生お二方をお招きし、約20名の食農連携に携わる地域の農業関係者や県職員、連携推進機関やコンサルタント、研究機関の方々などにご参加いただきました。少人数の参加ではありましたが、東北地域など遠方からの参加者もおり、大変熱意のある参加者の多い中身の濃い研修となりました。

講習1 13:40〜14:55

テーマ:
地域ブランド型商品マーケティングの実践
 〜地域価値で「売れる」を創る〜 →研修資料はこちらPDF
講師:
有限会社なにわ創信舎 マーケティングプロデューサー 原 テルキ 氏

 原講師は、商品の企画や、販路コーディネートなど商品を「売る」ということを行ってきた経験から、現在、地域資源を生かした販路開拓に関わる取組みを行われています。今回の講習では、今までマーケティングに携わってきた経験をもとに、マーケティングを使ってどのように農を活性化させていくか、地域の抱える問題をどのように解決していくべきかといったような、マーケティングを地域活性化の取組みに取り入れていく際のポイントをご説明いただきました。

 原講師からは、現状として、農産品が農産品のままで何らかの手が加えられた「商品」になっていないものが多いに見受けられる、何らかの加工を加えて農産品の価値を高めた商品をつくり、さらには付加価値を高めてブランド化するといった発想が大切だ、いいモノ(素材)をつくっているだけではダメ、モノより効能、そのためにはマーケティングの知識と技術が役立つとマーケティングの重要性についてお話をお聞かせいただきました。

 「活性化」とは経済的に効果があること、つまりは「儲かる」ことであり、構造的に儲かる「仕組み(戦略)」と、売るためにする全ての手法と活動「仕掛け(戦術)」を考えていく必要があることや、大事なのは顧客価値を見極める需要創造、売りたい人、買ってもらいたい人といったターゲットを明確にするべきであると話されました。

 また、生産者から消費者までのチェーンづくりが重要であるとし、そのためには、コーディネーターが、生産者と消費者までの間のチェーンにはいりコーディネートし、消費者まで到達するチェーンつくることが求められる。コーディネーターとは、どこかの農業事業者と商品開発をして終わりでなく、それをどのようにして消費者まで届けるのか、知ってもらうのかといった各行程を最適化しながら、全体の最適化も行うという発想、トータルで「売れる」を創る能力を持つべきであると話をされました。

石川研修2010_1

(原テルキ講師)

石川研修2010_2

(研修会場の様子)

講習2 15:00〜16:15

テーマ:
地域ブランドと女性マーケット →研修資料はこちらPDF
講師:
株式会社エイガアル 代表取締役社長 伊藤 淳子 氏

 伊藤講師は編集者として女性向け雑誌の編集に携わってきた経験から、雑誌の制作は地域のブランドづくりに役立つという考えを持たれており、そのような視点からの女性の心理を上手く突いた地域ブランドづくりはどのように行っていくべきか、女性マーケットをどう捉えるべきかといったお話をお聞かせいただきました。

 伊藤講師は、男性雑誌は、釣りマガジン、パチンコなどテーマが決まっており、それを好きな人が幅広い世代層でみているが、女性雑誌の場合は、一つの雑誌の中に、特集、旅、グルメ、占い、ファッションの情報が盛り込まれているといったような総合誌的なものが多く、雑誌ごとに年齢やターゲットが想定されている、雑誌によって雑誌を見る人のライフスタイルがみえてくるといいます。地域ブランドづくりにおいても、ターゲットを考えるということは難しいですが、つくった商品をどのような雑誌のどのようなページにどのような形で掲載してみたいかを考えてみると、ターゲットやアピールの仕方など商品づくりに必要なものがみえてくるそうです。

 また、食農連携などの事業推進において、成功しているところはだいたい女性が頑張っているところであり、そのためには地域の女性を上手く巻き込んでいく必要があると話されました。女性を巻き込んだ事業推進のポイントとして、女性は難しい話は嫌う傾向がある一方で、どんな状況でも100%満足せずに常に何かを求めて探しているといった上昇志向があるので、そこをうまく理解し、「誰のために、何のために、誰と行うのか」とわかりやすく説明しながら、地域の女性を盛り上げていくと事業を円滑に進めることができるといった女性の視点からのアドバイスがありました。

 さらに、女性消費者に対して持つべき視点として、ちょっとしたおまけやサンプル、口コミ、他社ブランドとの提携などで、女心に訴えることができることや、女性は上昇志向が強いため自分磨きや自己投資をしたがるとともに、母性としての誰かのために尽くす喜びも持ち合わせているため、そのような心情を燻るものづくりをしていくと面白いものづくりができるといったお話をお伺いすることができました。

石川研修2010_3

(伊藤淳子講師)

石川研修2010_4

「女性はおまけが大好きです」と
女性誌付録の買い物バックの数々を披露

まとめ(意見交換) 16:15〜16:45

進行役: (社)食品需給研究センター 長谷川 潤一

長谷川: 今日はユニークなコーディネート戦略ということでお話をお聞かせいただきました。100件あれば100種類の成功の要素があるように全てが類型化できませんが、今回の講義の中で何か聞いておきたいことはありますか。

公設試(秋田県): 男性が女性の感覚を学ぶために何か推奨されるようなコツはあるのでしょうか。

伊藤講師: 女性誌はパターンが同じで1年前のものと見比べてもあまり中身はかわらないのと同様に、女性が求めるもの自体にあまり大きな違いはないので、女性誌を研究するということがいいのではないでしょうか。また、周りの女性や同僚を観察することで、感覚を磨いたり、若い女性に気になるものを購入してきてもらい、購入理由を聞くなどでマーケティング力を磨いていくことや、地域の年輩女性のいろいろな意見やアイデアを聞きだすことで面白い発想を得られることもあります。

研究独法: いいものをつくっている人は妥協しない、儲かるとわからないと手を出してこない人たちをどうやって説得して商品化に持っていかれるのでしょうか。

原講師: 生産者から供給を受けるというのは一番難しいことでありますが、じっくり話しこんでわかってもらうしかないと思います。また、生産者は商売に対して自身をもっていない方が多いので、コーディネーター側が必ず売るということを断言する、しっかりと販路があることをわからせることも大切だと思います。

研究独法: 地域産品の開発において、まず、味噌と漬物とジャムが地域でつくられて失敗するというエピソードを聞いたことがありますが、先ほどの講義の際に例として出てきた明日香村のピクルスをどのように商品化に結び付けたのでしょうか。

原講師: 明日香のピクルスは「明日香(飛鳥)」という名前のブランド力があります。明日香村だからピクルスにしましたが、知名度の低いどこかの村で同じ事をしても失敗します。その辺の状況判断が必要なのではないでしょうか。

行政(石川県): ネット戦略を考えていく場合の基本的な販路の構築についての考えをお聞かせください。

原講師: 売っていくことに対しては様々なマーケティングの手法論がありますが、基本的には電話をしてサンプルと資料を持って商売に行くというだけであり、そのときの資料がおもしろく、「欲しい、扱いたい」と思わせるようないう演出がないと売れません。

農業法人(富山県): 漬物、カット野菜など同じようなものが巷にはあふれているように思いますが、ストーリー性、マーケティングという概念がないから売れていないのか、売上げの奪い合いをしているのか、過飽和なだけで海外に出て行くべきなのか、どのようにお考えでしょうか。

原講師: 競争が激しいということを怖がってはダメです。過飽和な状態でも勝たなければいけない、マーケティングは戦いであり、その競争に勝つ以外に地域が生きていく方法はありません。

伊藤講師: 本屋に売っている雑誌だけが市場でなく、最近は通販雑誌など、書店雑誌以外の読者の市場はまだまだあります。発想と場所を変えていく、企画をいかに考えていくかがポイントとなるのではないでしょうか。

長谷川: 最後に、コーディネートをやっていく中で、関わっていく人のモチベーションをあげていくためのモチベーションを一言で言えば何かをお聞かせください。

原講師: 「金のにおいをさせること!」

伊藤講師: 「マドンナ!」

石川研修2010_5

(まとめ(意見交換)の様子)

石川研修2010_6

(参加者からの質問)

参加者からの声

(講演全体を通して)

  • 全く両極端の講師でとても面白かったです。
  • 今まで漠然と知っていたような事柄が鮮明にわかりとても興味深かったです。
  • 現在の流行や動向が分かりやすく参考になりました。
  • 実践レベルでの話が聞けてよかったです。
  • 生産者思考から消費者思考への転換を促していく必要があると感じました。
  • 生産者に栽培以外のもう1本の柱の提案や、二次三次産業への進出などの提案をしていきたいです。
  • 売る先の客に的を絞った商品開発と販売を行っていきたいです。
  • 意見交換の場を多くとってほしかったです。
  • 午前、午後の二部制にし、講師とディスカッションができればよかったです。
  • よくあるセミナーとは違い、楽しかったです。次回はもっと「"アッ!」と驚く楽しいセミナーを楽しみにしています。

(原講師の講演に対し)

  • 仕組み(チャネル、コミュニケーション)の重要性、価値と付加価値など、実際に生産者に提案する際に参考となる話が聞けて非常によかったです。
  • やっぱり儲けないと続かない、欲求(金銭)がモーションにつながるという話が印象的でした。
  • 消費者からどのように金をもらうかという発想が斬新でした。
  • 農産品を商品にする必要があるという言葉が印象的でした。

(伊藤講師の講演に対し)

  • 女性と男性の価値観の違いを念頭に置くべき点に気付かされました。
  • 女性の視点が大変よくわかりました。
  • 女性視点が意外でした。